東海ちなヤクの巣@パワプロと大相撲番付予想

スポナビブログから引越し。スポナビブログ時代は、プロ野球(東京ヤクルト)を中心に、大相撲の話もちょろっとしてました。はてなブログでは、パワプロと大相撲(番付予想)を中心に展開していきます。

「セ・リーグでも『DH』導入を検討とな?」

セもDH!“パ高セ低”打破へ導入検討…早ければ19年にも

 

ここ最近、セ・リーグでもDH(指名打者)制を導入するかどうかの議論が盛り上がっていますね。

 

先に答えを言ってしまうと、筆者としてはDH制に関しては「どっちでもいい」です。ハッキリ言って。

セ・パの差別化と言う意味でDH導入を見送ってもいいし、パに倣えとDH導入を推進してもいい。一個人としてはなるようになればそれでいいと思っていますが、まあそれでは記事を書く意味がないので、少しずつ考察を進めていきましょう。

 

 

 

 

まずは指名打者制度の歴史と、パシフィック・リーグにおけるDH制導入の経緯。

指名打者」そのものが生まれたのは、野球の本場・アメリカ合衆国。当時過度な投高打低の影響で観客動員が伸び悩んでいたアメリカン・リーグが人気回復を図って導入したのがその始まりとなります。

日本でも、同じく観客動員に伸び悩むパシフィック・リーグア・リーグを参考に1975年から導入。パ・リーグは同時期的にシーズン前後期制の導入、予告先発なども導入し、DH制や予告先発などは現在も残っていますが、肝心の観客動員増に対してDH制は効果を発揮できませんでした。また日本の場合、DH制導入前後に阪急ブレーブスで代打の切り札として活躍していた高井保弘の存在もあったのも、その要因となっています。

 

その上で、セ・リーグでDH制を導入するにあたってその理由付けを簡潔に検証しましょう。

理由は主に、「セ・パ2リーグ間で戦力に差が出ている」とのこと。確かに、セ・パ交流戦は13年間でセ872勝、パ981勝とパ・リーグが優勢。セ・リーグパ・リーグに勝ち越したのは2009年の1シーズンのみで、それ以外の12シーズンは全てパ・リーグが勝ち越しています。

それだけだと「だったらDH制導入に意義があるのでは?」というお話になりますが、もう少しデータを提示しましょう。

 

日本シリーズは、DH制が導入された1975年以降だと日本一がセ・リーグ19回、パ・リーグ23回とパ・リーグがリード。ただし球界再編問題が起こった2004年以前に限ると、セ16回、パ14回でわずかながらセが逆転します。

オールスターゲームでは、1975年以降セ・リーグ56勝、パ・リーグ44勝とこちらはセ・リーグが大きくリード。ちなみに2004年以前がセ39勝・パ35勝、2005年以降はセ17勝・パ9勝です。

 

交流戦日本シリーズオールスターゲームの結果から察するに、セ・パ両リーグの「トップレベル」の実力差は言うほど変わっていないはず。もしセ・パ両リーグ間で懸絶された力量差が生じているならば、せめてDH制を導入して10年後あたりから、パ・リーグセ・リーグを圧倒していないと説得力に欠けると思います。

 

恐らく当初セ・パ両リーグで戦力が均衡した理由は、セ・リーグパ・リーグより圧倒的に人気があって有力選手が巨人や他のセ・リーグ球団への入団を希望したこと、またはセ・リーグに比べてパ・リーグがドラフトで選手に指名拒否されるケースが多かったこと。

指名選手入団率(契約に至った選手÷ドラフト指名選手)では、2004年からドラフトに参加した東北楽天こそ入団率100%が1位。以降、巨人(92.4%)、中日(92.0%)、広島東洋(90.1%)がトップの4チーム。5位以降に横浜DeNA北海道日本ハム福岡ソフトバンク阪神東京ヤクルトと続き、現在存在するチームでワースト3がオリックス(87.3%)、埼玉西武(85.7%)、千葉ロッテ(85.2%)となります。ちなみに2003年までドラフトに参加していた大阪近鉄バファローズは、これら現行12球団より下の82.7%となっています。

それが、近年は平成以降イチローの登場や松坂大輔のプロ入りなどを経て徐々にパ・リーグの人気が上昇し、選手の入団拒否が減ったこと。またドラフトの目玉選手がパ・リーグへ多く入団していることが、パ・リーグの実力を底上げしていると考えられる理由のひとつになるでしょう。

 

個人的にはもうひとつパ・リーグが実力をつけてきた理由があると思っていて、それは「球団による育成・編成システムの効率化」。以前三軍問題でも触れたように三軍を創設してチーム全体を底上げした福岡ソフトバンク、自前の育成サイクルを構築してパ・リーグをかき回す北海道日本ハム、自前の育成力に定評のある埼玉西武やエースの存在には困らない東北楽天などがリーグ全体のレベルを上げているといってもいいと思います。これらの球団はドラフトもしっかりとした戦略をもって育成する一方、特に福岡ソフトバンク東北楽天は必要とあれば資金を出して補強も行うので、リーグ全体が上昇志向にあるといっても過言ではないと思います。

それを、果たしてセ・リーグが追随出来ているかと言うと、育成力という点では広島東洋、戦略面では横浜DeNA、甘く見ても阪神まではまあ太刀打ちできるか……とは思いますが、他の3球団がそれを出来ているか、と言うと評価は厳しくなるでしょうね。

 

だから、もしセ・パの戦力差解消をDH制導入に求めるのであれば、筆者としてはそれは的外れではないかと思います。DH制導入によってこれまでと違った視点で試合を楽しむという視点があるならそれはそれでいいと思いますが、チームとしての戦略に一貫性がなければ、仮にDH制を導入したとしても勝てないチームは勝てないままで終わると思うので、もしDH制導入の第一義が興行的な理由ではなく戦力均衡であるなら、筆者は反対します。

 

 

 

そして、チームとは別で今度は試合単位で見た時のお話。

かつてセ・リーグは、「DH制を導入しない理由」を9か条に掲げていました。以下がその内容。

 

1.1世紀半になろうとする野球の伝統を、あまりにも根本的にくつがえしすぎる。

2.投手に代打を出す時期と人選は野球戦術の中心であり、その面白みをなくしてしまう。

3.投手も攻撃に参加するという考え方をなくしてしまう。

4.DH制のルールがややこしくファンに混乱をおこさせる。

5.ベーブ・ルーススタン・ミュージアルは投手から野手にかわって成功したのだが、そのような例がなくなる。

6.仕返しの恐れがないので、投手が平気でビーンボールを投げる。

7.いい投手は完投するので得点力は大して上がらない。

8.投手成績、打撃成績の比較が無意味になる。

9.バントが少なくなり野球の醍醐味がなくなる。

 

条文をひとつずつ解釈していくと賛同する部分とそう思わない部分とがありますが、ともかく野球がそもそも9人制のスポーツとして始まりDH制が後追いである以上、1.の条文は信念のある内容だと思います。

あとDH導入に反対する人の意見としては、「投手の打席が見られなくなる」と言うものがあります。確かに本来野球が9人制で、本来であれば投手もその9人のうちの一人である以上は攻撃(打撃)に参加すべきという考えもあるし、またプロ野球においては投手の打撃と言うのも一種の楽しみ方としてあります。一方で、投手の打撃シーンでは打席で無気力に立ちすぐに凡退するシーンもまま見られ、その2点でどうバランスを取るかも論点だろうと思います。

 

あともうひとつ、セ・リーグで今回DH制導入の議論が活発化されたのは清宮幸太郎の存在がいるから。

清宮は言わずとしれた今ドラフトの目玉選手ですが、その清宮は守備の評価はあまり高くありません。清宮と関連する各球団や報道の言動は省きますが、DH制を導入するにしても「清宮ありき」では少なくないファンが納得しないだろうと思うのです。

清宮は確かに現時点で守備の評価が高くないとしても、プロに入って鍛えることで守備力が向上する可能性はあります。その可能性を、最初からDH制を導入することで封じてしまうのは彼のためによくないでしょう。それにもし「清宮ありき」を通そうとするなら、まずプロ(=セ・リーグのチーム)に入って高井保弘クラスの成績を残してから言うべきだと思うのです。

 

冒頭では「どちらでも」といいつつ主張はやや反対よりになった気はしますが、特に強くDH制導入に反対しているわけではないので、それこそ筆者としては成り行きを見たいと思っています。

ただ、DH制導入となると歴史を大きく変えることになるので、その点は注視すべきだと思います。

 

 

 

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