東海ちなヤクの巣@パワプロと大相撲番付予想

スポナビブログから引越し。スポナビブログ時代は、プロ野球(東京ヤクルト)を中心に、大相撲の話もちょろっとしてました。はてなブログでは、パワプロと大相撲(番付予想)を中心に展開していきます。

周囲の雑音に負けるな、そして惑わされるな。 【#52 中村悠平】

野球において、捕手は「扇の要」と称され、特に守備において重要なポジションとされています。

その捕手としてプロで活躍し、「名捕手」と謳われる選手も、80余年の歴史を誇る日本プロ野球に数多くいます。

その名捕手の中でも、スワローズの歴史の中で燦然として輝き、そして今もなおファンの心に残っているであろう人物がふたり。

ひとりは古田敦也。1990年に入団し、ルーキーイヤーから正捕手の座を掴むと、「ID野球の申し子」と呼ばれた緻密な野球理論から繰り出されるリード、そして強肩攻守、さらに1991年には捕手として当時史上2人目の首位打者を獲得するなど打者としても中核を担った、スワローズ黄金時代の看板選手。

もうひとりは野村克也。選手としては南海、ロッテ、西武でプレーし、1990年の監督就任後はその古田を育て上げて90年代スワローズ黄金時代を演出した名監督。

特にオールドファンを中心に、その心に鮮烈に刻まれたであろうふたりが、スワローズのみならず球界全体のもたらした影響は計り知れないものがあります。

一方で、2006年に古田が選手兼任監督に就任してから、スワローズの「正捕手の座」はしばらく定まりませんでした。

2006年は米野智人が台頭しましたが、翌年は不振。2007年から2年間は福川将和川本良平が台頭しましたがいずれも決め手を欠いた状態。2009年に相川亮二がFA移籍で入団すると、その相川が正捕手となりました。

その相川から正捕手の座を奪った選手が、中村悠平

中村は2012年に一軍に定着して頭角を現すと、2014年には99試合に出場して規定打席不足ながら打率.298をマークして相川を2度目のFA移籍に追いやります。そして2015年、中村は正捕手の座を完全につかみ136試合に出場。投手陣を引っ張り、チーム14年振りのセ・リーグ優勝に大きく貢献しベストナインも受賞しました。

しかし翌年、中村は急激な打撃不振に陥ります。投手陣が記録的な投壊に陥る中で中村も苦しみ、中盤からは西田明央にスタメンマスクの座を譲ることもしばしば。結局2016年は、2015年の成績を下回り不本意なシーズンとなってしまいました。

その中で、Twitterであったりその他ネットの様々なページを見回ったりするなかで、特に昨年は中村を批判する言動が多かったと思います。

特によく聞いたフレーズは、「リードが悪い」。

しかし、このリードと言うものは、端的に言えば(ファン目線からは)答え合わせができない。

少なくともリード、リードと言う人は、結果論の範疇で「打たれればリードが悪い」「よければお咎めなし」、そういう具合で言っているのではないか?

リードに関しては筆者も自論があるので詳しいことは別の機会に書こうと思いますが、中村への批判の意味で「リードが悪い」を言うのは、少なくとも去年に関しては無理があった。なぜなら、昨季は投手陣全体が目に見えて絶不調だったから。

中村の要求したコースにまず投げ切れたかどうか? そこから話をするべきではないか? 中村への身もふたもない、根拠のない批判を目にするたびに、筆者はそう思っていました。

端的に言えば、まず捕手が投げるコースと球種を要求する。それに投手が応えられるかどうかがまずひとつめの基準。ここで投手が失投し、打者に打たれてしまえば、これはまずコースに投げ切れなかった投手の責任。

投手が捕手の要求通りに投げ込んだら、あとは打者の反応次第。配球の組み立てもありますが、ここで抑えればそれでよし。ヒットは打球の要素……フライ性なのかゴロ性なのか、当たりが強いか弱いか、どのコースに飛んだか……にも因りますが、どちらにせよ運も絡むのでここで捕手が問われる責任は少なくあるべき。

捕手の要求通りにボールを投げて、「たまたまではなく完璧な当たりの」本塁打を打たれて、初めてそこでリードに対する批判をするならすべきだと筆者は個人的に思います。

その「捕手の要求通り」に投手がピッチングできたかどうか。これも元来はファン目線で証明する術はありません。野球には感想戦がないので、直に戦った選手から聞くこともできません。

そして仮に、捕手の要求通りに投げたボールでバッターを打ち取れたら。本来要求したコースとは違うコースに投げたら結果はどうなったか。そんな「if」は、想像したところで結果は変わりませんし、わかりません。都合のいいようにすることは出来ますが。

ただ、体感としてスワローズファン、特にオールドファンが古田や野村の残した幻影、遺産に引きずられて中村を見ているのではないかと思う中で、「リード至上主義」に覚える違和感はかなりものものがありました。

だからこそ、中村がもしファンからの厳しい目線を感じているのなら、いっそそれは「無視してくれ」と。

リードなんてものは所詮結果論だ。

確度を上げるためにリードは確かにあるけれど、100%相手を打ち取れるような「絶対的な」リードはない。

そして何より捕手がリードより大事なものは、投手との信頼関係だ。信頼関係がなければ、捕手のするリードも独りよがりになってしまう。

もしかしたら、「中村のリードが悪いせいでチームが負けた」などと言う、心のない人もいるかも知れない。

だけど、チームの勝敗が捕手ひとりの優劣で決まると思ったらそれは大間違いだ。

チームの勝敗は、あくまでチーム全体の力と運で決まる。責任を感じることは大事かもしれないが、必要以上に背負い込むな。

もし中村が今、昨年を上回るチームの低迷に悩んでいるのなら、月並みかもしれない、もしかしたら他の人も言ってくれているかもしれないが、このような言葉をかけたいと思っています。

「そして何より、正捕手としてもがいている、頑張っているあなたを応援している人はたくさんいるんだと言うことを。

あなたが扇の要としてプレーしているからこそ、スワローズというチームがあるんだと」。