東海ちなヤクの巣@パワプロと大相撲番付予想

スポナビブログから引越し。スポナビブログ時代は、プロ野球(東京ヤクルト)を中心に、大相撲の話もちょろっとしてました。はてなブログでは、パワプロと大相撲(番付予想)を中心に展開していきます。

スワローズ「三軍問題」 ヤクルトは三軍を創設すべきか?

Twitterのタイムラインでよく見る話題。東京ヤクルトの場合、最近は「三軍」という言葉をちらほらと見かけるようになりました。

Twitterでは様々な論点で三軍についてスワローズファンが語らっていますが、筆者も一度この記事で「現時点での考え」をまとめてみるとしましょう。

まず結論から言うと、筆者の主張としては「三軍創設はすべき」。しかし「来年すぐに」はよしておくべき。

単純に見たいから、という感情論での理由もありますが、本質的な理由は他にあります。

近年「ヤ戦病院」と揶揄されるほどケガ人が多く、それが低迷の大きな要因を占めている東京ヤクルト。今年もブルペン捕手の新田玄気を育成選手登録するなど、本来育成の場であるはずのファームが機能しきれていない印象がちらほら見えています。

ちなみにスタッフを育成選手登録し現役復帰させる例は、2015年にも当時打撃投手だった阿部健太(現スカウト)でもありました。阿部の場合は投手で登録しながら実際は野手で起用するというあべこべさで、この年はリーグ優勝したからまだ笑い話になるものの、それでも笑えるかどうかギリギリのライン。どちらにせよ、あまり望ましいことではありません。

東京ヤクルトは近年は「支配下登録選手+育成登録選手=70人」の体制を敷いているようで、今季開幕時点では支配下登録選手66人+育成登録選手3人で69人。シーズン中に杉浦稔大⇔屋宜照悟のトレード、カルロス・リベロ獲得、新田玄気の育成選手登録があって現在は支配下67人+育成4人で計71人。恐らくリベロは二軍のある埼玉県戸田市の球団寮ではなくマンション借り上げだと思うので、70人という枠には概ね合致することになります。

問題は、新田を除く選手70人のうちどれだけが稼働することが出来るか。

今季の主な選手だけでも川端慎吾畠山和洋、雄平などがAS前後までに今季絶望。AS後に限っても星知弥と小川泰弘が相次いで離脱するなどレギュラー陣が相次いで離脱。途中離脱からの復帰を含めても原樹理、秋吉亮、大引啓次ら多くの選手に当てはまり、二軍まで把握しようとすると恐らく数え上げるだけで日が暮れるでしょう。それほどまでに、ケガ人が多いという状況となっています。特にレギュラーの半数を欠いている現状では勝つのも難しいわけで、低迷も致し方なしというか当然というか。

その「ケガ人が多い」という現状と、三軍をどう結び付けるか。

三軍を創設すると言うことは、三軍単体で試合を行える程度には人員を補給するということになります。そこから考えられるのは、

「三軍で育成する」→「二軍に選手を供給する」→「二軍で選手間競争を煽る」→「より質の高い選手を一軍へ送り込む」

というサイクル。

三軍と言えば、成功例に挙げられるのは福岡ソフトバンクホークスでしょう。例えば千賀滉大はルーキーイヤーの2011年に三軍で登板数を重ね、翌2012年に二軍に定着し支配下登録を受けます。2013年に一軍に定着して以降の活躍は、皆さんご存知の通りかと思います。

ホークスの強みは下部組織の育成の質が高く、三軍内・二軍内での競争が好ましい状態で激しいこと。育成選手から支配下登録を受けた例は千賀以外にも、千賀と同期の甲斐拓也が今季一軍に定着してブレイクを果たしているなど、こちらも例を挙げようとすると多くなります。

もうひとつ、目立たない部分ではありますが重要なファクターをホークスに挙げるとすれば、引退後のアフターケアがきっちりしていることが挙げられるでしょう。チームの人数に対して活躍出来る選手の数がどうしても限られ、大半は20歳代の若さで引退を余儀なくされるプロ野球においては、引退後の就職先がネックとなるのです。それに対してホークスは、親会社であるソフトバンクの関連企業への就職をまず勧めるなどこの方面も重視し、それが高卒選手を多く獲得できる土壌になっています。

では、その「選手の育成」と「引退後のアフターケア」、さらに三軍を創設するとなればその分の「設備投資」と「コーチの確保」が重要となりますが、果たしてそれを東京ヤクルトはクリアできるのか。

まず「選手の育成」に関してですが、恐らく東京ヤクルトが三軍をもし創設するのであればここが一番ネックになるだろうと思います。現時点では育成しようにもケガ人が多く望ましい環境ではないので、「ケガ人を出来るだけ出さない環境」の構築を本来は優先すべきでしょう。

応急処置的に出来るのは、他球団からリリースされた(若手の)選手を育成登録で獲得するか、ドラフトで育成選手をある程度獲得すること。いきなり10人も指名する必要はなく、70人枠から5人程度余剰が出る程度でいいので、まずはスタッフを現役復帰させる必要がない程度には人数を揃えたいところではないでしょうか。あとは選手に「気軽にケガを報告できる」「迅速に診察を受けさせられる」体制を整えて、23年で理想の環境が構築できれば次のステップへ上がれると思います。

「引退後のアフターケア」に関して、筆者が育成よりハードルは低いだろうと思うのは、親会社のヤクルトが12球団の親会社を比較すれば大規模の部類に入ると言うこと。もちろんこれは球団とヤクルト本社で調整する必要はありますが、実際にも杉浦亨加藤幹典などの例がありますし、やろうと思えばこれも出来るとは思っています。

そして、最後のピースとなるのは設備投資。

一般に、三軍を創設すると選手やコーチの年俸などを合わせて3億円はかかると言われています。

資金だけを考えれば、手っ取り早くやろうと思えば本社から融資してもらうという手もあります。しかし実際は資金があれば出来るというわけではなく、球団寮や球場などのハード面ではヤクルト球団だけでなく本拠を置く戸田市との折衝も行わなければならないでしょうし、決定したところですぐに設備が完成できるわけでもないので、短兵急には進められません。

その上で、三軍を創設するとその分の組織を維持しなければなりません。初期投資に比べれば維持費はそこまでとも思いますが、それでも普段よりは増えるので、その分の資金を確保しなければならない。それだけの見通しが立って始めて、GOサインが出ることになるでしょう。

最後に、他球団の三軍事情も軽く触れておきましょう。

現時点で三軍制度が明確にあるのは福岡ソフトバンク広島東洋、巨人。実質的に三軍と言えるチームがあるのは東北楽天、「育成コーチ」という枠組みが複数人いる球団はオリックス阪神、中日があります。

福岡ソフトバンクは上述の通り、広島東洋の三軍はどちらかと言えば「リハビリ組」の印象が強いのでこれは除外。

巨人は三軍名義の試合も多く組まれていますが、その三軍が機能しているかと言えば疑問符がつきます。

東北楽天は二軍とは別に三軍ともいえるチームが例えば独立リーグのチームと対戦を重ねていますが、人数が足りず試合が中止されたり投手が野手のポジションに就いたりするなど、この点では育成とはかけ離れて本末転倒になっている印象。東北楽天の場合は単純に人数が足らないという点もありますが、一番失敗しているとの烙印を押さざるを得ないほどには不満のある現状を呈しています。

その他、オリックスは噂程度ではありますが三軍創設の機運があり、中日は二軍全体に対して育成選手の数が多いのでこちらも三軍創設への前準備が進んでいると思わせる段階。阪神は一時期に比べて育成選手の人数を多く減らしているので、恐らく三軍は創設しないのではないかと言うのが筆者の感想です。

この福岡ソフトバンクの成功例、巨人と東北楽天の現状を鑑みた上で、東京ヤクルトは三軍創設に踏み切るべきか。

冒頭に戻りますが、東京ヤクルトが「ケガ人が多い」という望ましくない土壌がある以上は、あって選手の人数を確保するに越したことはないと思うのです。しかし三軍もただ創設すればいいわけではなく、選手を飼い殺しにしないように育成し維持し続けなければならないので、その点を慎重に検討を重ねる必要があります。

それらを踏まえた上で、今オフの東京ヤクルトは監督の交代が決定事項となる中で「大きく動く」ことになると思うので、一挙手一投足に注視していこうと思います。