東海ちなヤクの巣@パワプロと大相撲番付予想

スポナビブログから引越し。スポナビブログ時代は、プロ野球(東京ヤクルト)を中心に、大相撲の話もちょろっとしてました。はてなブログでは、パワプロと大相撲(番付予想)を中心に展開していきます。

石川雅規は、本当に「衰えて」しまったのか? 【#19 石川雅規】

東京ヤクルトスワローズの現役最年長選手であり、16年のキャリアで積み重ねた通算156勝は現役最多。

東京ヤクルトが誇るベテラン左腕、石川雅規の今季成績は23試合に登板し4勝14敗。防御率は5.11で直近11連敗を喫するなど、今季は波に乗れずシーズンが終わろうとしています。

今季37歳の石川のこの現状を前に、多くのファンは「石川は衰えている」「劣化した」などと言うかもしれません。実際、筆者も「限界が近いのではないか」と思っていました。

石川のプレースタイルはプロ入り当初から変わらず、典型的な軟投派。軟投派の場合球速は元から遅く、加齢しても球速が目に見えて落ちにくいために球速だけを見るとわからないことがままあります。

それを踏まえた上で、筆者が「データを見るまでに」石川に対してどう思っていたかは以下の通り。

ちょっとうちでよぎったのは石川がなぁ石川の成績は石川への絶対評価、石川がまだ先発ローテの一角に入っているのはチームでの相対評価石川のファンには悪いけど、今の石川を裏か谷間に持って行けないあたりはしんどいわなって感じ— 野村祐希@10/1神宮遠征 (@NomuraYuhki) 2017年9月22日

ものすごく悪意のある言い方をすると、今年の東京ヤクルトじゃなかったら引退勧告受けてもおかしくないわけでさ11連敗自体は貧打線のせいもあるけど、それでも40近いおっさんが防御率5点台なのにチームで4番目にイニング食ってる(しかも2位と2回しか違わない)っておかしいよ普通— 野村祐希@10/1神宮遠征 (@NomuraYuhki) 2017年9月22日

もひとつ言うなら石川の「年齢による劣化」ってあんまり考えてなかったけど。これも悪意のある例え方するなら近視の老眼みたいなもんだよ— 野村祐希@10/1神宮遠征 (@NomuraYuhki) 2017年9月22日

同じ日の早朝に書いたとはいえなかなか酷いことをぶっちゃけてしまっていますが、筆者はこの後考えを大いに改めることになります。

では、なぜ筆者は「考えを大いに改め」たのか。データを引っ張り出してご説明しましょう。

石川の今季と過去5年間、計6年間のセイバー系指標(+α)を下に表示します。本来はExcelなどでまとめればよかったんでしょうが、めんどくさいので省略。

…….|投球回|被安|ERA|BB/9|K/9|K/BB|WHIP|勝敗

2012|172.2|175|3.60|2.14|5.21|2.44| 1.25|8勝11敗

2013|148.1|149|3.52|2.00|5.16|2.58| 1.23|6勝9敗

2014|165.0|181|4.75|2.67|5.51|2.06| 1.39|10勝10敗

2015|146.2|150|3.31|1.72|5.52|3.21| 1.21|13勝9敗

2016|116.2|126|4.47|2.55|4.01|1.58| 1.36|8勝8敗

2017|123.1|149|5.11|2.04|6.42|3.14| 1.44|4勝14敗

まず指標の説明。

ERAは防御率、そのままの意味です。

BB/9は「与四球率」で、1試合(9イニング)でどれだけ四球を与えるかの指標。数字が低いほど「コントロールがいい投手」となります。

K/9は「奪三振率」で、1試合でどれだけ三振を奪ったかの指標。数字が大きいほど「三振の取れる投手」となります。

K/BBは「奪三振÷与四球」で求められる数値で、この数値が大きいほど「制球力が高く三振を奪える投手」となります。

WHIPは「1イニング当たり平均何人のランナーを出したか」の指標。計算式は省略します。

勝敗に関しては、これは運の要素が強いのでここでは重要視しません。防御率1点台の投手でも貧打のチームにいれば2ケタ勝利もままなりませんし、防御率4点台でも強力打線を擁するチームにいれば2ケタ勝利をマークすることもあります。登板数にもよりますが、石川の場合でも防御率3点台とまずまずの成績だった2012年・2013年は10勝に届かず、反対に防御率4点台後半を記録した2014年は10勝に到達しているので、「衰え」を語るときに「勝敗数」だけで物事を語るのはかなり危険なことです。その悪い例が前述の引用ツイート。

それを踏まえた上で、直近6年間の指標を考察。

まずBB/9は基本1点台後半から2点台前半にまとめ、今季の2.04は6年間では3番目にいい数字。

K/9の6.42は実はキャリア16年で一番高い数字。今季は確定ではありませんが、もしこのままシーズン成績が確定すれば2011年の6.41を0.01ではありますが上回ってキャリアハイ更新と言うことになります。

そしてK/BBが3.14。石川はキャリアではK/BB4点台を2回(2005年、2006年)記録していて、3点台は今年を除くと7回(2002年、2004年、2007年、20092011年、2015年)。K/BBは数字が高ければ高いほどいい指標であるので、その点では今季のK/BBは「評価できる数字」となります。

今季目に見えて悪化したスタッツがWHIPで、この1.44は6年間で過去最低。上記の指標から考察するに制球力は衰えていないので、石川が今季苦しいところがあるとすれば「多くの安打を与えてしまっている」という点なのです。過去6年間ではたいてい「イニング=被安打」だったのが、今季は被安打が投球回を20以上上回っている計算。その上で、上記の表にはありませんが被本塁打も常時2ケタを計上しているので、石川にもし「劣化」という言葉を当てはめるとすれば、それは「球威の」という枕詞がつくことになります。

しかし、被安打はセイバー系ではあまり「投手(のみ)の責任」ということにはなりません。被本塁打はともかく、被安打はチームの守備力にも依存する結果指標ですから、今度はチームのDER(チームの守備力を評価する指標)を見なければいけません。

そのDERは、今季の東京ヤクルトは.680台前半。昨季(2016年)も同じ程度で、リーグ優勝を果たした2015年は.690台中盤。2014年は.670よりわずかに上、と言った程度です。

石川の投球スタイルは「打者にゴロを打たせる」スタイルなので、バックの守備力が何よりモノをいいます。この4年間で最も守備指標が良かった2015年が防御率3.31で13勝を挙げられて、反対に守備指標が悪い2014年が10勝を挙げながら防御率4.75を計上。

今季は東京ヤクルトがDERリーグ5位で、防御率5.11となってしまっているのもひとえにはこの「石川の守備力依存の投球スタイル」に起因しているといえるのです。

では、石川が復活する芽はあるのか。

球威の衰えは、制球よりも加齢に起因するものだと思うのでこれを食い止めるのは難しいでしょう。石川のように、失礼ながら元から球威のないような投手ならなおさらです。とはいえ制球力は衰えを見せていないと言っていいでしょう。

端的に言うならば、「守備力を上げる」ことが出来れば被安打を減らして球数を少なくなることで球威を保ち、なおかつ打線が援護できれば来年2ケタ勝利を達成できる可能性は十分ある。来年制球力が目に見えて落ちない限りは、むしろしてもおかしくないと言っていいと思います。

ただし、石川の投球スタイルは野手任せになるので、この野手……「打線の強化」と「守備力の強化」のどちらかを最低ひとつは達成しないと星は伸びません。どちらもおろそかになると、今年のようにスタッツが悪化して負けが込んでしまいます。前者だけでも強化出来れば2014年の再現として勝利数は稼げるでしょうし、両立が出来れば2015年のように他の球団の投手と並べても遜色ない成績を残すことが出来るでしょう。

それらを踏まえて、Twitterで筆者が出した結論がこれ。

石川が今季ここまでアレなのを原因まとめると劣化したって言うのは訂正する。これは違うと言っていい。スタッツ見るとむしろ被安打以外は進化してる部分もある。ただ被安打だけが近年に比べて増えすぎている。被安打は守備力にも左右されるから、だったら問題は自分ではなくチームのほうではないか— 野村祐希@10/1神宮遠征 (@NomuraYuhki) 2017年9月22日

だから、暴論言えば同じセのチームだとうちと阪神以外にいたら石川は10勝しててもおかしくない。阪神だともっとひどくなってるかもしれん()— 野村祐希@10/1神宮遠征 (@NomuraYuhki) 2017年9月22日

ちなみにここで「阪神だともっとひどく……」とあるのは、今季阪神のDERがダントツで最下位だと言うこと。阪神は三振を奪う能力の高い投手が多いのでこの守備力の低さが順位には直結していませんが、もし仮に石川が阪神にいれば今よりもっとひどくなる可能性があるということにもなります。

だから、指標で判断する限り石川に「衰え」は言われるほどないはずです。だから、スタッツが「揺り戻すかどうか」は今オフの編成と、野手陣の成長次第にかかってくると思います。特に石川の場合自力で何とかするのが難しいわけなので、裏を返せば「石川にどれだけ白星を積み上げさせられるか」、「石川の防御率をどれだけ良化させるかで順位が決まる」という言い方が出来るはずです。

まずは通算200勝に向けて、今季石川の一軍登板があるようなら1勝でも多く積み重ねてアシストした。そして来年、逆襲とともに大きく記録を前進させたいところです。