東海ちなヤクの巣@パワプロと大相撲番付予想

スポナビブログから引越し。スポナビブログ時代は、プロ野球(東京ヤクルト)を中心に、大相撲の話もちょろっとしてました。はてなブログでは、パワプロと大相撲(番付予想)を中心に展開していきます。

プロ入りから5年。「大下佑馬」と言う投手を考える

ぼくのTwitterをフォローしていらっしゃる方はプロフィールなどでお察し頂けているかとも思いますが、ぼくが今現役のNPB在籍選手で一番好きな選手がこの大下佑馬投手です。

普段は敬称付きで「大下さん」と呼んでいますが、贔屓目を抜きにした評価としては、本人には失礼ながらあまり目立っていない選手ではないでしょうか。
今回は、もうぼくは客観的に大下さんのことを見られないので、ぼくなりの視点でその大下さんを見つめ、記事を書いていきたいと思います。プロで5年経ったから、そろそろそこら辺の評価をしてもいい頃でしょう。


まず、大下さんを語る上で欠かせないとぼくが思うのは、彼がドラフト指名された2017年ドラフト。

1位:村上宗隆 捕手 九州学院
2位:大下佑馬 投手 三菱重工広島
3位:蔵本治孝 投手 岡山商科大
4位:塩見泰隆 外野手 JX-ENEOS
5位:金久保優斗 投手 東海大学付属市原望洋
6位:宮本丈 内野手 奈良学園
7位:松本直樹 捕手 西濃運輸
8位:沼田拓巳 投手 石川ミリオンスターズ

当時のドラフト評価は、どちらかと言えば散々でした。
週刊ベースボールでの評価は45点で最下位。Numberでの小関順二氏の採点も50点で最下位タイ。野球太郎では80点と高評価だったようですが、その他ファンからの評価でも2位~4位が当時はほぼ無名と言えた存在だったので酷評の嵐だったようなことを覚えています。

名前を出してしまっているので先に大下さん以外の面を言及しますが、何と言ってもこの年のドラフトは今年三冠王を獲得した1位・村上宗隆でお釣りが来ます。現に2021年、2022年とリーグ連覇を果たし、2021年の日本一にも貢献した村上はまごうことなきその原動力となりました。
また、4位で指名した塩見泰隆も今やセンターのレギュラーとして不動の存在になりつつあり、これもまたリーグ優勝、昨年の日本一に大きく貢献しました。脇を固める5位・金久保優斗や6位・宮本丈、個人的には7位の松本直樹もそれぞれチームを支え、リーグ2連覇や昨年の日本一に大なり小なり貢献をしてくれました。

その中で大下さんの評価は、正直に言ってしまえばそこまで芳しいものではないと思っています。
ドラフト2位とは、1位の期待値には及ばなくても5年経てばチームの柱として期待されるポジションです。個人成績は後述しますが、大下さんが残したこれまでの実績は残念ながら決して大きくはないのです。

ドラフト同期の話をすると、大下さんと比較出来る対象の投手が2人いて、それはともに2巡目に大卒社会人投手で北海道日本ハムに指名されたNTT東日本・西村天裕と、オリックスに指名された鈴木康平(K-鈴木)だと思っています。

プロ5年で、その大下・西村・K-鈴木の通算成績は以下の通り。

大下佑馬:109登板 3勝4敗0S09H 155.1投球回118奪三振 防御率4.17 
西村天裕:122登板 3勝2敗1S12H 146.0投球回166奪三振 防御率4.01
Kー鈴木:079登板 5勝9敗2S05H 174.0投球回141奪三振 防御率4.86

K-鈴木は2019年に先発ローテーションの一角として19試合に先発している分登板数は大下・西村よりは少ないですが、似たり寄ったりと言える中でも登板数・ホールド・奪三振数・防御率は西村が、勝利数と投球回はK-鈴木が上回っていて、通算成績では大下さんが上回っている部分は特にないんです。





話が前後しましたが、先に話しておかないといけないのは、なぜぼくが大下さんを応援するようになったかだと思います。Twitterではたまに言っているんですが、知らない方も多いと思いますのでね。

結論から言えば、きっかけは上述の2017年ドラフトです。
2017年ドラフトで2位・大下、3位・蔵本、4位・塩見の3人が「誰?」とのリアクションを受け、そして知らないからと懐疑的、批判的な視線をファンが向ける中で、「みんな知らないなら観に行こうじゃないか」と当時大学生だったぼくは、ちょうど大下さんと塩見が出場する、ドラフト後に開催された日本選手権を観に行きました。
JX-ENEOSの塩見は、ぼくが観に行った1回戦(初戦敗退)は5打数1安打。足の速さは評価していましたが、同じJX-ENEOSからプロに指名された若林晃弘(巨人)や齋藤俊介(元横浜DeNA)と比べると、やや印象が薄かったです。

一方で、当時三菱重工広島に在籍していた大下さん。1回戦のJR東日本戦では7.2回1失点の好投でこの年オリックスに1位指名された田嶋大樹に投げ勝ちました。2回戦の日本製鉄かずさマジック戦ではチームは敗れたものの大下さんは1.1回を無失点に抑え、合計2試合9イニングを1失点にまとめるピッチングを目の前で見せてくれました。この時は、まだ野球を見る目の肥えていない一端の大学生と言うのもありましたが、本気で大下さんに夢を見ました。「このピッチングを出来るなら、プロでも通用するんじゃないか」と。



翻って、プロで5年を過ごした大下さんの各年度別成績はどうか。簡単にまとめると、以下のようになります。

2018年:25登板 2勝1敗0S5H 43.2投球回35奪三振 防御率3.09
2019年:31登板 0勝2敗0S2H 41.2投球回30奪三振 防御率5.18
2020年:13登板 0勝1敗0S0H 16.1投球回10奪三振 防御率5.51
2021年:30登板 1勝0敗0S1H 38.2投球回32奪三振 防御率3.72
2022年:10登板 0勝0敗0S1H 15.0投球回11奪三振 防御率4.20

2018年は2試合の先発を含み、その先発では結果を残せなかったものの救援としてはまあまあ及第点の成績。しかし2019年、2020年は防御率5点台に終わり、2020年のオフにはそれまで着けていた背番号が「15」から「64」に重くなりました。
それでも、2021年は救援として2019年に次ぐ30試合に登板。結果的に最終登板となった試合で炎上してしまい防御率は3.72になっていますが、それまではその防御率を2点台にまとめ上げて中継ぎ陣を縁の下から支えてリーグ優勝に陰ながら貢献しました。
2022年は4月に10試合に登板した後二軍へ降格し、7月までは二軍で投げていましたがその後は恐らく怪我があったのか登板なし。経歴としてはおおよそこんな感じです。

救援投手の中でも、大下さんが担ってきた役割はビハインドでの登板やモップアップ(いわゆる敗戦処理)などで、セットアッパーと言った花形の役ではなく地味なものだったと思います。
ドラフト2位と言うポジションからモップアップが主な役回りになったことで、抑えてもあまり称賛されず、打たれると非難を浴びる。そんな光景をぼくはネット上で何回も見てきました。でも、ビハインドやモップアップを担うリリーフ投手もチームには必要なんだと、好きな選手である大下さんがそれを担うことによって見方が大きく変わりました。
もしかしたら、このような陽の目を浴びない役割は誰もやりたがらないものかも知れない。大下さんだってやりたいかどうかは分からないし、もっと活躍出来たらその役割は「卒業」出来たでしょう。特に2021年から、スワローズのリリーフ陣が強固になっていく中でステップアップは難しかったけど、よそのチームならリードしている場面で出て来る役に「昇格」出来たのかも知れない。
それでも、「縁の下の力持ち」を黙々とこなす大下さんの姿を見て、ぼくはもっと彼のことを応援しようと思うようになりました。



そして、もうひとつ。
大下さんは2021年シーズン途中に、投球フォームをこれまでのスリークォーターからサイドスローへと転向しています。

スワローズの公式ファンクラブ、「Swallows CREW」の広報誌である「SWALLOWS TIMES」に今年、一度大下さんの特集記事があったんですが。
プロ野球の投手がキャリアの中で、投球フォームを変えることはそこまで珍しくはありません。上手投げで活路を見出せなくなった投手が、横手投げなどの変則フォームに転向して活路を見出すなんてことはままあります。ただ、大下さんはそれをシーズン中にやりました。
同じ時期に上手投げからサイドスローへの転向を打診されたチームメイトの中尾輝は、結局サイドスローへの転向が上手く行かずに上手投げにこだわり、2021年オフに戦力外通告を受けています。これは別に中尾が悪いと言うわけではなくて、中尾には中尾の適性、プライドや矜持があった結果そう言う道になったとぼくは解釈しています。ともかく大下さんはサイドスローへの転向で活路を見出し、生き残ったんです。

「SWALLOWS TIMES」にはそのサイドスロー転向の話が記されてありますが、今までスリークォーターでダメで、伊藤智仁コーチから「特徴がない」と言われて、その中で取り組んだサイドスローへの道。最初は厳しいと思っていたそうですが、不退転の覚悟で取り組んだ結果交流戦後に一軍へ復帰。そして中継ぎ陣の一角として一軍で登板を重ねてました。シーズンオフには新球種のシンカー習得にも挑戦しています。最後のほうに、「スタイルを捨てる事に躊躇は全くなかった」とありますが、伊藤コーチの厳しい言葉がきっかけでプライドも何もかなぐり捨てて挑んだ新境地で、とりあえず生き残るための筋道はつけた。それが、ぼくにとっては輝いて見えたのです。





だいぶ書きたいことが取っ散らかってしまいましたが、ともかくプロで5年を終えた大下さん。
今年は先にチラッと触れた通り、一軍での登板は4月の10試合のみ。二軍では成績こそ良かったものの7月中旬以降は投げられずにシーズンを終えてしまいました。
プロ野球は厳しい世界です。少しでも隙を見せたら、来季の契約を勝ち取れないこともある。大下さんもその立場を考えれば、常に薄氷を踏む思いのシーズンであり、そこで確固たる成績を残すことは出来なかったのでもしかしたら来年はユニフォーム姿を見れないかも知れない。
でも、5年と言う決して短くない期間を大下さんにしか出来ないスタイルで過ごしたことを、いちファンのぼくはぼくなりに誇りに思います。来年のことは来年にならないとわかりませんが、ともかくどんな道がこの先訪れるとしても、ぼくは大下さんのことを応援し続けようと思っています。