東海ちなヤクの巣@パワプロと大相撲番付予想

スポナビブログから引越し。スポナビブログ時代は、プロ野球(東京ヤクルト)を中心に、大相撲の話もちょろっとしてました。はてなブログでは、パワプロと大相撲(番付予想)を中心に展開していきます。

「申告敬遠」のお話。

www.sponichi.co.jp

12月18日に「導入見通し」と報道された、日本球界における「申告敬遠」。
MLBでは今季から導入され、日本球界でもその「国際化」の流れに沿うように来季からの導入が検討されていますね。
これに関してはTwitterでも様々な議論があるんですが、一応自分からも自論を書いていきましょう。




端的に言えば、自分は「賛成派」。
ただ、よく敬遠の申告制に対して言及される「時間短縮」の効果はないと思っています。

敬遠の申告制は、簡単に言ってしまえば敬遠(公認野球規則では「故意四球」と呼称される)の際に要する4球を投じる必要がないと言うこと。
物理的に4球を投げる時間が削れる分「時間短縮の効果を生む」と言うお話ですが、故意四球そのものはMLBでも1試合に1回あるかどうか。1試合に1回も故意四球が記録されない試合も多くあります。
ちなみに今季NPBセ・パ両リーグの敬遠数ですが、最少が福岡ソフトバンクの1個、最多が横浜DeNA東京ヤクルトの14個。12球団合計では90個で、12球団平均は7.5個。1チーム単位で考えても10試合に1回あるかないか程度なので、その「10試合に1回」のために、せいぜい1~2分もかからないであろう敬遠の時間短縮をやる意味はあるのかね? とは思います。

時間短縮を図りたいなら、NPBで言えばイニング間の過剰なパフォーマンスをはじめとして手を付けられるところはいくらでもあると思う。筆者が見たことのあるカテゴリーで言えば高校野球、社会人野球はたいてい2時間ちょっとで終わるのに対し、プロ野球では3時間ゲームはザラ。1時間も長く伸びる要因は、探せばいくらでもあるんです。
その点に関しては下記のブログ記事を見ていただければと思いますが。

aigawa2007.hatenablog.com




だったら、なんで筆者はそれでも「賛成派」の立場をとるのか。
冒頭に貼ったニュース記事のリンクにある通り、またはWikipediaの「故意四球」の項目を見ていただければと思いますが、敬遠ひとつ取っても生まれるドラマがある。
記憶に新しいのは2017年5月21日の東京ヤクルトvs阪神戦、7回に登板したJ.ルーキが敬遠球を暴投して、これが阪神の決勝点に結びついたケースがあります。
また敬遠球を打者が打つことは特に公認野球規則で制限されていないため、例えばW.クロマティ(巨人)と新庄剛志(阪神)が敬遠球をサヨナラ安打にしたり、柏原純一(日本ハム)が本塁打を放ったりしたケースもあります。

これらをひっくるめて、「敬遠ひとつ取っても生まれるドラマがある」と言う話ですが。
上述した通り、敬遠は「10試合に1回あるかないか」の頻度でしか起こらないわけです。ましてや、その敬遠が何かしらのドラマを生んだケースは、(Wikipediaの記述に頼るのも心もとない話ではあるんですが)敬遠球の打撃は6回ほど、敬遠球の暴投が決勝点になったケースは3回ほど。プロ野球80数年の歴史で「6回ほど」、「3回ほど」の希少性でしかない敬遠に関するドラマを、わざわざ期待するか? と言う感情のほうが筆者は強い。
まあもちろんドラマは滅多に起こらないからこそドラマなんですが、時々この手のプレーを「野球の醍醐味」とのたまう人たちがいるのが個人的には理解できない。いや、理解の範疇にないことはないけど、もっと他に王道の「醍醐味」たるプレーはいくらでもあるだろうと思うわけです。



「醍醐味」に関しては、敬遠から話題は逸れますがもうひとつ言いましょうか。
上記に掲載したブログにも言及されていますが、「コリジョン・ルール」の話。説明は省きますが、そのコリジョン・ルールの導入に関しても筆者は賛成派でした。
コリジョン・ルールで規制されるのは、走者と捕手が激突するクロスプレー。ボディコンタクトの少ない野球において、このクロスプレーは数少ないボディコンタクトが起こるプレーであり、これもまた数々のドラマを生んではいます。
ですが一方で、走者の過剰なタックルで捕手が負傷退場するケースも少なくなかった。そんな、捕手が負傷する危険性のあるプレーを制限しようとしたのが「コリジョン・ルール」で、これは適用されて数年経っていたと思いますが、効果はあると思っています。
このコリジョン・ルール導入に関しても、「クロスプレーという『野球の醍醐味』が失われる!」と言った意見がありました。ただ、筆者個人としては敬遠より起こる可能性が高く、かつケガのリスクが高いプレーを「野球の醍醐味」と、特に第一流の醍醐味だとは思えない。暴力性がある分、あるとしてもそれはアンダーグラウンド的なものでしょう。

暴力性があるという意味では「乱闘」もその範疇に入るんでしょうが、乱闘はむしろプレーイングの主流から外れる分「野球の」と言う接頭辞をつけることすらおこがましい。現代野球では滅多に起こらない分「むしろ」な部分もありますが、「殴り合いを見たいなら格闘技でも見ればいいんじゃないですかね」、という考えのほうが強いです。
こんなこと言うと格闘技ファンから怒られるだろうし、近年大相撲を見始めた筆者としても(いろいろと)不本意ではありますが。



話を戻します。

敬遠において「ドラマ性がある」とされる、敬遠球の暴投や打撃。そのドラマ性を否定はしませんが、それもせいぜい80年で10回程度あるかないか。
それよりももっと王道で、第一流の「醍醐味」はいくらでもある、と言うのが「賛成」論を構成する筆者の考え方。よく言えば「合理的」、悪く言えば「情緒の遊びがない」って言うやつです。
それを踏まえた上で、今度は下記の記事をご覧いただければと思います。

sportiva.shueisha.co.jp

必要に応じて、正しいと思った方向に躊躇なくルールを改正するのはアメリカ人の気質でしょうね。「正しいと思った方向」が、「結果的に正しかったとは限らない」けれども。
ともかく、筆者としてはMLBが目指す「合理性」はある程度理解できます。個人的に肝だと思うのは、MLBが目指す時間短縮の一環として導入しているのは、何も敬遠の申告制だけではないと言うこと。例えば攻守交代に時間制限を設けたり、登場曲を流す時間を短くしたり、走者がいない状態で打者がバッターボックスをみだりに外すことを禁じたりすることなどが挙げられます。

「合理性」に関しては、敬遠の申告制で言えば「醍醐味」と「合理性」の比重をどこまでとるかの問題でもあるでしょうが、敬遠球の打撃や暴投による「醍醐味」は、筆者としてはやはり「第一流」ではないと思う。
「野球の醍醐味」を語るなら、それの第一流は奪三振であり、ホームランであり、ファインプレーでしょう。それらに比べれば、敬遠球から発生するドラマは「削ってもいい部分」だと筆者は思っています。

あとは、MLBが主導して敬遠の申告制を導入するなら、国際大会でのことも考えて合わせておいたほうがいいかな……という感じ。
MLBが主導するなら恐らくその定めた規則はWBCなどの国際大会も準拠するはずなので、些細なことであっても「ルールが合わなかったから不利に働いた」ではそっちのほうが実害が大きいと思っています。これは例えば審判団によるボーク判定でも同じことが言えるんですがね。



以上が、筆者個人の考えによる「申告敬遠」の是非の問題。

蛇足として、この記事に限りませんが、筆者は「自分はこう思う」と言っているだけで、「自分の説が絶対的に正しいんだ」とのたまうつもりは一切ないです。その代わり、読者の皆さんが少しでも記事で取り上げた案件について考えを巡らせて、あわよくば意見を拝聴できれば、とは。