1年納めの九州場所は、実に20年振りの海外公演となるロンドン巡業が先月挙行された後の本場所でした。
場所の序盤を牽引したのはやはりと言うか、既に通算で5回、横綱としても2度優勝を果たしている大の里。中日終了時点でただひとり全勝とその力を発揮した大の里は、優勝候補として当然最有力でした。しかし大の里は10日目に義ノ富士に初金星を献上する黒星を喫してしまうと、11日目は隆の勝を相手に痛恨の連敗。さらに13日目の関脇安青錦戦では勝ったものの左肩を痛めてしまい、14日目に大関琴櫻に敗れ3敗。優勝争いの先頭から陥落したばかりか、怪我が重く千秋楽では異例の休場、不戦敗を喫する予想外の展開となってしまいました。
代わりに優勝争いを牽引したのは、横綱豊昇龍と新関脇の安青錦。豊昇龍は初日の伯桜鵬戦で不覚を取り、6日目には若元春の変化に屈しましたが、7日目以降は白星を連ねて10日目に勝ち越し、大の里連敗の間隙を突いて優勝争いの先頭に並びました。安青錦は入幕以来11勝を挙げ続ける実力そのままに9日目には早くも勝ち越しを決め、13日目終了時点でも3敗と優勝争いに加わり続けます。
14日目に組まれた豊昇龍と安青錦の直接対決では、合い口の良さそのままに安青錦が勝利、これで大の里・豊昇龍・安青錦が3敗で並ぶ展開に。千秋楽で大の里は前述の通り球場で不戦敗、対戦相手だった豊昇龍が不戦勝。安青錦が優勝するためには本割で琴櫻に勝ち、さらに優勝決定戦で豊昇龍にも勝つ必要がありましたが、その本割では琴櫻を内無双で下して決定戦へ。優勝決定戦では安青錦が横綱としての初優勝を目指した豊昇龍を送り投げ、ウクライナ出身力士としての初優勝を飾ることとなりました。
安青錦は前相撲から取った力士として史上最速の所要13場所での新関脇となった場所でしたが、12勝を挙げての初優勝は「立派」のひとこと。大関が琴櫻ひとりのみという状況も手伝い、場所後の大関昇進は濃厚と言えるでしょう。安青錦の持つ力は誰もが認めるところですが、この勢いそのままに横綱まで駆け上がる可能性もあるだけに、行く末が楽しみな存在でもあり末恐ろしくもあります。
両横綱に関しては、大の里は怪我がまず心配。師匠の稀勢の里(二所ノ関親方)が怪我で実質的に力士生命を絶たれた過去がある以上、まだ20代中盤と若く先のある大の里が近視眼的に無理をして怪我を悪化させる未来は見たくない。千秋楽の休場は賛否あると思いますが、個人的には休場という「英断」を支持したいです。そして豊昇龍は横綱として賜杯を抱くことは今場所叶いませんでしたが、力はありますし悲観することはないと思っています。課題はありますし、焦る気持ちもあるかとは思いますが、自分の力を信じて来年に横綱としての優勝を見たいところ。優勝するだけの力があるのは、過去2回の実績で証明していますからね。
では番付予想です。

安青錦が大関に昇進することを前提に、まず三役は東2枚目で11勝を挙げた霧島と西小結で8勝の髙安が順当に上がるのではないでしょうか。小結は西関脇で7勝8敗と1点の負け越しに留めた王鵬と、西2枚目で8勝の若元春を据えるのが丸いと思います。星数の感情なら東8枚目で11勝の一山本が若元春を上回るのですが、実際どう編成するのかはともかく「当たった相手」を考えるなら若元春が上であってほしい。
幕内は中位までの7勝8敗は据え置きで考えてみましたが、今回は「そうしないともっと歪になる」と思ったから。自分の中での根拠はありますが、ニュアンスとしては予想ではなく願望か思想表現の類になりますね…………。負けの込んだ力士が多い分エアポケットも生じやすいので、予想だけでも百人百様に分かれる気がします。
幕内⇔十両は新入幕の朝白龍・羽出山、再入幕の朝乃山と湘南乃海・佐田の海・明生が入れ替えと予想。後者は迷う要素があまりないかなと思いますが、入幕争いはかなり混戦でした。ここは後述。
十両上位については、星数だけで言えば昇進するに足る成績を残している力士が3人以上います。西筆頭で8勝の藤青雲、東2枚目で9勝の琴勝峰、西3枚目で9勝の大青山も候補とは言えるでしょう。羽出山と十両据え置き予想した3人のうち誰かの入れ替わりはあると思いますが、その場合でも大青山はやや弱いか。筆者の予想だと勝ち越した藤青雲が据え置きとなってしまっていますが、それこそ今場所で琴勝峰が勝ち越したのに据え置かれた事例がある以上可能性はありますし、そうなった場合でもまあ仕方ないとしか言えない気もします。気の毒ではあるし、あまり見たいものではないですが…………。
十両の中での昇降は毎度のごとくエアポケットが生じやすいので、基本的には「上がりやすく落ちにくい」傾向になるはず。十両上位と、今回の場合は藤凌駕が星数通りには上がらないかなと予想しますが、藤凌駕に関しては誤差と言える実力を持っていそうです。
十両⇔幕下の入れ替えは旭海雄・出羽ノ龍・一意⇔三田・日向丸・紫雷と予想。昇進する3枠は概ね意見が一致すると思いますが、幕下陥落は特に三田を取るか白鷹山を取るかが迷いどころか。東3枚目とは言え未勝利の上途中休場した三田、東10枚目で4勝の白鷹山はともに陥落やむなしの成績ですが、上がる星の数字を残した幕下力士が先述の3人だけという状況ではどちらかが残る可能性が多分にあります。筆者は白鷹山を十両尻に残す予想を立てましたが、西5枚目で4勝の(本来なら昇進を考えにくい)聖白鵬を引っ張り上げて2人を陥落させるケース、三田を留めるケースも考え得るだけに難しいところです。この辺りは予想としては難解なので、審判部がどう判断し編成するかは注目するところだと思います。