このブログはプロ野球(東京ヤクルトスワローズ)メインで書いていますが、たまに大相撲の記事も投稿します。
そしてこの記事を書いている最中は、「そういえばスポナビライブでは、幕下までは無料でライブが見れるんだったね」と思い立って、タブレットでライブ中継を見ながら執筆しています。
思い立ったのが10時ごろで、大相撲は10時ごろはおおよそ序二段の取組の時間。スポナビライブは三段目以上だと実況・解説(16日・七日目の三段目解説は元関脇寺尾の錣山親方でした)がつきますが、序二段以下はまさに映像・音声の垂れ流し。その分呼出や行事の声、観客の歓声や声援がよく通るわけですが、これは普段NHKでの地上波中継で十両以上の取り組みを見るのがメインの筆者にとっては新鮮でした。
大相撲の大まかな階級としては、幕内→十両→幕下→三段目→序二段→序ノ口(→前相撲)。メジャーリーグにそのまま比定してしまえば、
幕内=MLB
十両=3A
幕下=2A
三段目=アドバンスドA(A+)
序二段=クラスA
序ノ口=ショートシーズンA(A)
(前相撲=ルーキーリーグ)
とも言えるのではないかと思います。かなり乱暴ですが。
メジャーリーグでも大相撲でも、階級があってかつ実力主義の世界であるので、年功序列という言葉は通用しません。幕内では今場所大いにファンを賑わせている阿武咲は若干21歳ですし、反対に35歳の嘉風も関脇として活躍中。十両ではありますが、安美錦も38歳ながら今場所は十両東二枚目につけ、2016年七月場所以来の幕内復帰も視野に入れています。一方で現在40歳以上の力士も8人いて、現役最年長は東序二段35枚目の華吹で47歳3か月です。
メジャーリーグを出したので野球の話で同じことを言うならば、プロ野球の最年長出場記録はNPBでは元中日ドラゴンズ・山本昌の50歳2か月。メジャーリーグでは、生年月日が確実な人物に絞ればかつて千葉ロッテマリーンズや独立リーグ・石川ミリオンスターズにも所属していたフリオ・フランコやジェイミー・モイヤーがMLBでも一線級として活躍したという記録があります(実はフランコも生年月日に関しては不確実らしいが……)。
一線級で活躍するベテランとは対照的に、一度もその檜舞台に上がれず下位の階級でプレーを続ける例というのももちろんあって、大相撲だと上述した華吹の最高位は東三段目18枚目。同じ40歳以上の現役力士という点では、桃智桜のように最高位が序二段止まり(東序二段53枚目)ながらも現役を続けているという力士もいます。
一方のメジャーリーグでは、今年7月にMLB通算235勝のバートロ・コローンがツインズとマイナー契約を結び、同月中にメジャー契約に更新して30球団勝利を記録という例もあります。日本では今季は中日・岩瀬仁紀と千葉ロッテ・井口資仁が42歳で現役最年長。その1学年下に東北楽天・松井稼頭央と千葉ロッテ・福浦和也が控えています。
視点を切り替えて、「一流」と呼ばれる類の話。
プロ野球の場合、12球団の支配下登録選手に限れば最大で840人。育成登録選手を含めれば900人は優に超えます。その中で、投手の先発表ローテ+リリーフの勝ちパターン6人、野手のスタメン8人と考えてその総数が12球団168人と考えれば、その割合は20%となります。
大相撲の場合、700人弱の力士がいる中で幕内を構成するのは40人ほど、割合としては6%。十両まで含めれば70人前後、それでも割合は10%ほどにすぎません。プロ野球と比定するなら、大相撲の上位20%はおおよそ幕下上位までと考えていいでしょう。
しかし、プロ野球でも12球団168人全員が不動のレギュラーというわけではないので、「不動」もしくは「文句のないレベル」のレギュラーとなれば恐らくこの半分になるでしょう。そうなると、「プロ野球の確固たるレギュラー(10%)」=「大相撲の関取(10%)」となる。
ちなみにプロ野球のほうでは「日本野球界番付」というのがありまして、直近の成績だけではなくこれまでの実績を加味された選手の格付け表となっているのは大相撲と同じ。その幕内のメンツを見てみると、「確固たるレギュラー」というより「実績込みの一流選手」という言い方のほうが正確な気はしますが、概ね合っているものとも思います。
もちろん実績の積み重ねはベテランの方が有利ですが、大相撲で言えば上述の阿武咲、プロ野球だと上記の野球界番付を用いると北海道日本ハム・大谷翔平や東京ヤクルト・山田哲人のように若くして上位にのし上がる選手もいます。これは大相撲やプロ野球に限らず、他のいろんなスポーツにも言える話。
一方でベテランになっても風采上がらず、下位でくすぶるような選手も当然ながら出てきてしまいます。そんな選手を見た時に思うのは、「どこからプレーを続けるだけのモチベーションが来るのだろう?」ということ。プロ野球に関してはこれでもかれこれ17年見ているわけなので理解はできるのですが、大相撲に関してはまだ筆者は掴みかねているのが正直なところ。無粋で失礼ながら実際に続けている力士に不躾に訊いてみるのが手っ取り早いのかもしれません。
ただひとつ、スポナビライブの七日目で三段目の解説を担当した錣山親方が言っていたのは、「気持ちが切れない限りはいくらでも相撲は取れる」ということ。
引退、引き際に関してプロ野球と大相撲で決定的に違うのは、プロ野球はチームスポーツで「戦力外通告」という制度があり、本人の意志と関係なくキャリアが絶たれる可能性があるのに対し、大相撲は基本的に「戦力外通告」に相当する制度はなく、自らの意志で引退しない限りはいくらでも現役を続けられると言うこと(両者とも例外はあります)。
どのスポーツも年齢を重ねると、体の衰えが出てきてパフォーマンスが下がってしまうという宿命があります。しかしスポーツの側面として技術の他に「メンタル」というものがあり、このメンタルは磨こうと思えば死ぬまで磨き続けることが出来るもの。自らの手で止めない限り、いくらでも成長の余地がある分野と言えます。
このメンタルがある限りは、現役を続けることが出来る。筆者はまだ技術、体力が衰えるという年齢にはありませんので実感は持てませんが、プロ野球でこれまでそんな選手を何人も見てきた経験はあるので、それを思えば「そうかも知れん」とは強く思います。
プロ野球、大相撲ともに、各階級に幅広い年齢の選手・力士がひしめき合ってしのぎを削り、ファンはその攻防を楽しみに見ているという点はあるでしょう。その模様は、きっと複雑なモザイクなんです。裏を返せば、簡単に黒だの白だの言い表せてしまうような世界はつまらないのかもしれません。
その点では、プロ野球も大相撲も「モザイクになりやすい」世界なんだと思います。近年は世代交代が大きく叫ばれる両者ですが、だからこそ「今からファンを始める」ならチャンスでしょう。選手、力士にはさらなる熱戦を期待したいですね。