「ドラフトのクジ運」と言うことで考えると、東京ヤクルトが1位重複指名でハズレなく1回で当たりくじを引いたとなると、おそらく2007年高校生ドラフトでの佐藤由規(仙台育成高)以来なかったと思います。
その後は最初は外すものの、外しきると言うこともないという印象。2010年ドラフト1位の山田哲人(履正社高)は「外れ外れ1位」ですし、1位を一発で当てたところで結局は入団した選手がどう活躍するか、な気もします。
ちなみにここ3年のドラフトは、2015年は「ガッツポ事件」を経ての原樹理(東洋大)、2016年は一本釣りで寺島成輝(履正社高)、そして今年2017年は村上宗隆(九州学院高)。最初の1位指名で清宮幸太郎(早稲田実業高)が7球団競合で結果外し、村上は2回目の抽選で巨人・東北楽天との3球団競合の末でした。
村上は高校通算52本塁打のパンチ力を誇る「肥後のベーブ・ルース」。ポジションは高校時代は捕手と一塁手、中学時代を含めると二塁手まで経験があります。
指名時のポジションこそ捕手ですが、どうも本人、首脳陣とも「捕手」にこだわりはない様子。捕手自体で言えば今ドラフトでは7位で松本直樹(西濃運輸)を指名していますが、高卒で育成が前提の村上と大卒社会人で即戦力を求められる松本では立ち位置が根本的に違うので、村上と松本がポジション争いでかち合う可能性はあまりないでしょう。
とは言え。
捕手事情だけで言えば、現在正捕手を務める中村悠平が来季28歳。村上とは一回りほど年齢が離れているので、中村の後継者として捕手で育てることは別におかしくないんです。
ただ、村上と近い世代で山川晃司、古賀優大といるので、捕手として育成を目指すとこの2人と出番を食い合うことになる。特に1学年上の古賀は高卒ルーキーながら62試合に出場し打率.208の成績を残し、首脳陣も「中村の次は古賀」と考えていてもおかしくはない。
上述した通り村上は高校通算52本塁打の打力をもつ選手なので、捕手としてはダメだったとしても野手として食いつぶしが効く選手。しかし古賀は典型的な守備型捕手なので、「捕手・村上」にこだわると古賀の出番がなくなってしまうのがもったいない。捕手は特に経験がものをいうポジションなので、5年後を考えた時に「先に1年のアドバンテージがある古賀」と、「ポジションにこだわりがない村上」を考えると、捕手として優先すべき(出場機会を与えるべき)はやはり古賀なんでしょう。
で、そうなると考えられるのはコンバート。「三塁手」への報道をよく見ますが、二遊間ほど高い守備技術を要求されるわけではありませんが、強肩がデフォルト(であるべき)の捕手としてはうってつけ、経験しておけば将来一塁手もしくは外野手へ行った時でもつぶしが効く。「コンバート先としての三塁手」はそういうものだと思うし、村上の適性と、他にマクロな視点で考えれば、まあ落ち着くべき形に落ち着いたかなと言った感じです。
ここでは「二軍である程度成績を残し、三塁手として一軍レギュラーを伺うまで成長する」という前提で考えますが、その場合まず二軍でライバルとなるべきは廣岡大志。廣岡は今季チームトップの110試合に出場し打率.244、16本塁打57打点を記録。廣岡のポジションは遊撃手であり、もうしばらくは遊撃手として育てるのかなとは思いますが、その遊撃手としては今ドラフトで同世代の宮本丈が加入してきたので、本人の能力やプレースタイルを考えれば「廣岡の三塁手コンバート」も将来的にはありえます。他の選手も考えれば、三塁手を(一・二軍はともかく)村上と廣岡で争う可能性は十分あるし、またあってもいいでしょう。
そして二軍で成績を残したとき、次に壁になる選手は藤井亮太であり、川端慎吾。藤井は今季三塁手としてプチブレイクし一軍定着のきっかけを掴んだ選手で、川端は今季こそ腰のヘルニアで一軍出場はありませんでしたが本来なら上位打線を任せられる選手。ここに「三塁手をサブポジションとする」選手を合わせれば西浦直亨、谷内亮太などが加わるので、実はこの「スワローズの三塁手」と言うのはかなりの激戦区になるのです。
村上が4,5年後に大成する前提で編成を考えるなら、筆者自身としては村上を三塁手か外野手、廣岡は三・遊・外のどこかでレギュラーに育てたい。村上も廣岡も足はまずまずで肩が強いので、センスさえあれば外野守備は割となんなくこなせるんじゃないかと思います。そして川端は30代中盤に差し掛かるころなので一塁手へコンバートすれば守備の負担が減るはずだから、まずはこのあたりが理想と言うか自分ならこうするというか、ひとつ考えてもいいかなぁ、とは思います(実際理想通りに動くことはほとんどないので、この手の話は本当に戯言になるんですけどね)。
村上が三塁手を経て一塁手に収まってもいいし(一塁手に割く分の外国人枠を投手に当てられたらそれはそれで編成的にも楽になる)、最終的に外野手まで行ってしまってもいい。
村上に関しては、その打力を育ちつつ生かすことがチームにとっても村上個人にとっても大事なことなので、まずは1年間戸田で鍛えて落ち着くべきポジションを探すことが出来ればいいでしょう。この1年間でプロで戦える体を作り、技術面の基礎を作り、あわよくばシーズン最終盤に一軍で顔出しまで出来ればOK。
2年目以降に戸田軍でレギュラー、クリーンナップを張りつつ、一軍に顔を出せればいいと思います。
ともあれ野手でドラフト1位は、2011年の川上竜平(光星学院高)以来6年振り、捕手でとなると1969年ドラフトの八重樫幸雄(仙台商高)以来実に48年振り。
八重樫は同期入団に大矢明彦がいた影響でキャリアの前半を内野手、外野手としても過ごしていますが、その点は何となく八重樫と同じ雰囲気を感じるかも。その八重樫の生涯成績……1348試合、打率.241、103本塁打、401打点、6盗塁を、ポジションは問わずどこまで伺えるか、十年単位でモノを見るという話になりますが、どこまで迫れるか、そして追い抜けるかに注目したいですね。