きのうの2017年ドラフトから、一夜明けました。
ドラフト会議の模様はTwitterのタイムラインで逐次追っていましたが、こと東京ヤクルトに関してはまず1位で7球団強豪の清宮幸太郎を外し落胆したものの、外れ1位でこちらも3球団強豪となった村上宗隆を引き当てたところで歓喜。
しかし2位から4位まで知名度のない、予想外だった選手が指名されたことでタイムラインは「誰?」「また独自路線かよ」などの声に占められてしまいました。結局5位で金久保優斗、6位で宮本丈を獲得できたことで騒ぎは収まりましたが、8位で本指名終了後は育成ドラフトに参加しないなど、「???」な論調が多数でした。
ちなみにこの24位、仮に同じタイプで他に誰が指名できたかについて、筆者の見解は以下の通り。
改めてこれを見て、24位で仮にどの選手取れた? ってなると岩見、W高橋、増田、伊藤くらいじゃねえの? 特に岩見はクセ強い選手だし。間違ってねえとは思うんだけどなぁ。— 野村中務少輔 (@NomuraYuhki) 2017年10月26日
補足すると、挙げた選手はそれぞれ岩見雅紀、高橋礼、高橋遥人、増田珠、伊藤翔のこと。各所で行われた仮想ドラフトでは軒並み1位上位として挙げられていた選手です。24位の話なので、以降下位で指名されていた選手も含めての言及となりますが、12球団全体で避けていたとなればそれは「12球団スカウトが見るレベルではその程度の選手」という言い方も(選手には失礼ながら)できます。
何も東京ヤクルトに限らず他球団もそれらの選手を避けて社会人の選手を指名していることがあるし、方向性としてはやはり間違っているようには思えません。
ドラフトに関してはそもそも、仕事として日本全国を飛び回って調査しているプロのスカウトとただのファンとでは見えている世界も情報量も段違いでしょう。
ファンは基本的にミーハーなので、特に今年の東京ヤクルトや、あと他球団だと巨人のように知名度や人気が比較して低い社会人出身の選手が上位に来ると総じて評判が悪くなりがちです。しかしドラフトの結果は最終的に10年くらい経たないとわからないこともありますし、だったら選手の発掘を仕事としているスカウトを信じたほうが精神的にも楽だと思います。
と言うわけで、ここからは東京ヤクルトのドラフト指名8選手をひとりずつ振り返ります。
1位:村上宗隆(捕手・九州学院高)
高校通算52本塁打の強打を誇る「肥後のベーブ・ルース」。1年春からレギュラーを務め、捕手としても二塁送球1.9秒台を記録するなど強肩も誇ります。高校では3年間通して捕手と言うわけではなく、一時期は一塁手や三塁手もこなしていました。強打の捕手として期待がかかる一方、その打力を生かして一・三塁、もしくは外野手へコンバートして打線の中軸を担うことも可能です。
チームでは現在中村悠平が正捕手を務めていますが、その中村と村上がおよそ10歳差。中村が30代に差し掛かるころに村上が捕手として一軍を伺う程度に成長が出来れば、スムーズな世代交代が出来そうです。強打の捕手で行くのか、最終的に内外野へコンバートして絶対的クリーンナップを張るか、ともかく注目の選手です。
2位:大下佑馬(投手・三菱重工広島)
最速150キロのストレートで打者の内角を突く強気の投球スタイルが持ち味。持ち球はスライダー、シュート、カーブ、チェンジアップなど。制球力もまずまずまとまっている投手です。
この名前でネット検索すると「黒田二世」という評価、そしてかつては広島東洋が獲得を目指していたという情報がちらほら。社会人出身と言うことで知名度は低かったのですが、スペックは思ったより高いかな、と言うのが最終的な印象。年齢的に即戦力を求められますが、Twitterの社会人クラスタの話を総合するとリリーフ向きとのことなので、手薄な投手陣を補強する活躍に期待したいところです。
3位:蔵本治孝(投手・岡山商科大)
185cm・95kgの恵まれた体格から、最速151キロの威力のあるストレートを投げ込むタイプの投手。東北楽天に1位指名された近藤弘樹と2枚看板を張っていました。高校時代は外野手でベンチ入りはなく、大学進学後に投手に転向したため経験が浅く、フィールディングや変化球などに課題は残りますが、それらを差し引いてもパワーピッチャーとしての素質は魅力的。
蔵本はトミー・ジョン手術経験者ではありますが、4年時にしっかりと復帰しているので、無理さえさせなければ問題はないはず。制球、変化球と言った細かな技術をプロでどこまで仕込めるかが勝負で、もし覚醒させることが出来たならば球界屈指の剛腕投手になれる可能性を秘めています。まずは二軍で好投を続けて、一軍のマウンドで躍動する姿を見たいですね。
4位:塩見泰隆(外野手・JX-ENEOS)
走攻守3拍子揃った、アスリート型の選手。…………としか、情報が少ないために言うことが出来ませんが、ともかくレギュラー陣の高齢化が進む外野手陣を補強する期待を満たれる即戦力タイプの選手となります。
検索を進めると、「膝半月板損傷」を負っていたという情報があったのは懸念事項ではありますが、打撃力を伸ばすことが出来れば中距離砲、もしくは代打としての活躍は十分期待できるはず。あくまで「はず」ですが。
根本的に頭数が足りない外野手の、しかも半月板損傷の経験がある選手と言うことで本人には失礼ながら一番不安かな、と思う指名ではあるのですが、是非この評価を盛大に裏切ってほしい。
5位:金久保優斗(投手・東海大市原望洋高)
最速147キロの直球と2種類のスライダーなどを操り、2年春には選抜出場も果たした投打に期待のできる投手。2年秋は13試合で10完投をマークする豊富なスタミナも最大の武器となります。
投手としては制球にバラツキがあるのが懸念材料で、この制球力をどれだけ矯正できるかが投手として成功するための課題になりそう。とはいえこれだけの素材型投手を5位で指名できたことはラッキーで、球速もまだまだ伸びる可能性があることから、まずは二軍でどれだけスペックを伸ばすことが出来るかが勝負。
大学で1年秋からレギュラーを張り、大学日本代表も経験。リーグ戦は通算97安打、50m5秒9の俊足を誇り、遠投は90mをマークする俊足巧打の遊撃手です。金久保同様、宮本も上位指名候補に挙げられていただけに6位での獲得は予想外でした。
大学時代はMVP1回、首位打者3回、ベストナイン6回を獲得するなど、順位こそ6位ながらある程度即戦力としても期待できるであろう選手。ショートは大引啓次、西浦直亨、谷内亮太、廣岡大志らがひしめく激戦区ですが、俊足を武器に1年目から一軍に割り込んでもおかしくないでしょう。コーチ陣に同姓でかつて名手として鳴らした宮本慎也や、こちらも名選手として知られる石井琢朗が加入するなかで、宮本が英才教育を受けてショートのレギュラーに定着するという未来は十分描けるはず。1年目から内野のバックアップとして期待がかかる一方、将来的には宮本慎也のような守備の名手になる可能性を秘めています。
遠投120m、二塁送球1.9秒の正確かつ強肩を誇るスローイングが最大の武器となる捕手。50mは6秒4と捕手としてはまずまず、バッティングも意外性のある即戦力候補です。カタログスペック的にはむしろ7位で指名できたのが意外と言う感じで、プロの水に慣れればあわよくば正捕手も狙えるレベルでもあります。
現在一軍に定着していると言える捕手が中村悠平と西田明央のふたりで、社会人出身の松本に求められるのはこの2人に割って入る程度に一軍に定着すること。中村と西田が仮に不振に陥った時、即座に松本がスタメンマスクを被れるような選手になってくれればこの指名は「成功」と言えるでしょう。スペックが優れていて地頭もいい選手とのことなので、理想としては埼玉西武・岡田雅利のような感じで起用されて成績を残せればいいかなと思います。
8位:沼田拓巳(投手・石川ミリオンスターズ)
社会人チーム在籍時にマイナーリーグと契約して日本野球連盟から除名処分を課され、渡米してマイナーリーグでプレー。その後日本の独立リーグで3年間プレーしたという異色の経歴を持つ投手。投手としては最速155キロの力のある速球を軸に、スライダー、カーブ、チェンジアップ、スプリット、ツーシームなどの球種で緩急をつけるピッチングスタイルを持ち味としています。
独立リーグでは群馬ダイヤモンドペガサスで2年、石川ミリオンスターズで1年の計3年間プレー。通算54試合に登板し16勝15敗で防御率3.77をマークする先発型の投手。スタッツを見る限り制球力は中の下程度、被安打率も多いので即戦力として見るのは厳しいかもしれませんが、来季開幕時点で24歳となるので出来れば1年目から結果を出していきたいところ。制球力さえつけば、1年目から速球を軸に一軍のマウンドも見えてくるかもしれません。
東京ヤクルトが、ドラフトで指名権交渉を獲得したのが以上の8選手。ドラフトへの評価、選手への評価は多々ありましょうが、等しく一軍で活躍するチャンスはある選手が揃ったと思います。入団して、神宮の地で躍動する姿を楽しみにしています。
特に個人的な感情を交えるならば、大卒の蔵本と宮本は筆者と同級生になるので、同い年の奥村展征とともに是非一軍の舞台で活躍して欲しいですね。
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